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What's JAPAN SENSES
profile
日本の宝を、日本へ。奥田透は、パリにいた。セーヌにほど近い8区、話題のレストランが凌ぎを削るエリアに。昨年秋、パリ「OKUDA」を出店。さらに、鮨店を構えようとしていた。海外で、偽りなく胸を張れる自国の料理を提供すること。それは、本気でやろうとすればするほど、途方もない挑戦になった。まさか、パリの魚の流通にまで手をつけることになるとは。なぜ、そうしてまで、パリ出店に執念を燃やすのか。数ヶ月前、奥田は岩手を歩いた。リアス海岸の荒波が、コシのあるワカメを育てていた。内陸部に分け入ると、コナラの原木椎茸が繊細な香りを放っていた。ワカメである、椎茸である。しかし、それらには初めて出会う気高さがあった。そんな岩手の食材を、奥田の料理として、イートインスペースで広く紹介したい。奥田の背中を押した、百貨店バイヤーの目が輝いていた。魚介、肉、果実、雑穀、地元の人々の心づくしの郷土料理を味わいながら、奥田は静かに奮い立つ。「これは、宝だ。伝えなければなくなる、宝だ」料理人として真っ直ぐに向き合ってみたいと思う、豊かな食材がある。日本のローカルエリアはその宝庫なのに、日本人自身がそれを知らない。常々、湧き上がっては身悶えする、そんな思いと結びついた。三ッ星を獲り続ける「銀座 小十」は、ありがたいことに客が絶えない。それは、日本人は世界に評価されてはじめて自らの価値に気づく、という真実でもある。奥ゆかしさと言えば美しいが、奥田にとっては歯がゆさでしかない。それならいっそと、評価の最高峰の地であるパリを選んだのだ。成功の証しと言う人もいるだろう。だが、奥田は叫びに来たのだ。人生を投げ打つ覚悟で。日本の食のすばらしさを。あるべき未来を。生まれ、育ち、愛してやまない国とその人々に向けて。〈岩手を丸ごと味わうコース 「銀座 小十」奥田透氏〉前菜三種盛り、白金豚と木の子の味噌幽庵焼き(または鰆の雑穀蒸し べっ甲あん掛け)、焼き帆立とイクラの炊き込みご飯、真崎昆布 色彩野菜と卵豆腐の椀 お一人さま3,240円(税込) 伊勢丹新宿店本館地下1階=キッチンステージ■10月21日(火)まで。10時30分~8時(ラストオーダー7時) ※10月19日(日)はセミナー開催のため、12時15分からの営業となります。
Reminding Japan of its plentiful food culture Toru Okuda was in Paris.An area in the city’s competitive 8th arrondissement near the Seine, where many much-talked-about restaurants are concentrated. The chef opened OKUDA here last fall. He was also about to open a sushi restaurant.His motivation is to offer his home country’s cuisine in its purest form to diners abroad. The more effort he expends on the project, the more challenging it seems to become. He never saw himself dipping his hands into the logistics of the fish market in Paris.Why does he persist in opening restaurants in Paris?Several months earlier, Okuda was taking a walk around Iwate. The rough seas along the ria coast have bred seaweed with unexpected body. As you make your way inland, the delicate aroma of shiitake mushrooms grown on oak trees wafts pleasantly through the air. They may just be seaweed and shiitake mushrooms, but they exude a unique nobility.Okuda wanted to use the ingredients of Iwate and introduce them to as many people as possible in a restaurant environment. The eyes of department store buyers, who’d supported Okuda, lit up. Okuda quietly worked extremely hard while [people] enjoyed hearty regional dishes including locally produced seafood, meat, fruit and millet.“This is truly a treasure ? one that will vanish if people are not aware of its existence.” These are rich ingredients any chef would be excited to get his or her hands on.Despite the fact that these treasures grow in abundance in our own backyard, Japanese people are not aware of them.Tormenting irritation would often boil up inside Okuda.Ginza Kojyu, which has succeeded in maintaining three-star Michelin status, is fortunate to have a constant stream of customers. This perhaps evidences the fact that Japan has finally realized how highly praised its cuisine is by people around the world. Refinement conveys an image of beauty, but Okuda is frustrated “refinement is refinement and nothing more.” This is what motivated Okuda to take the plunge and set up shop in Paris, amidst the toughest critics anywhere.Some would say that’s proof of success. However, Okuda isn’t resting on his laurels ? he came to make himself heard.He has basically put everything on the line to show the beauty of Japanese cuisine, and his vision of its future.To the country of his birth and development, and object of his undying affection, and its people.“Enjoy the Best of Iwate” ? Ginza Kojyu, Chef Toru Okuda / Three types of appetizers, miso yuan yaki of platinum pork and mushrooms (or millet-steamed Spanish mackerel with tortoise shell sauce), rice with grilled scallops and salmon roe, Masaki seaweed, steamed egg custard bowl with colorful vegetables; 3,240 yen/person (including tax)Shinjuku ISETAN Main Building 1st Basement Level ? Kitchen Stage *Through Tuesday, October 21 ? 10:30 ? 20:00 (Last Order 19:00) *A seminar will be conducted on the morning of Sunday, October 19, and as such, the facility will open for business at 12:15.
INTERVIEW
今回のオファーについて、まずどうお感じになりましたか?
人口が東京に集中し、大きな工場は外国に移っています。今、日本の地方のほとんどが同じ問題を抱えているんですね。一方で、食材に関して言えば、どこよりもいいものが地方にあります。ところがその食材を、食文化を、産業を支えているのは、高齢の方々ばかりです。このままの状況が進めば、いったいどうなるのだろう。普段から抱えている、焦りに似た気持ちと結びつきました。皆さんも「岩手県の魚は?」と聞かれて、すぐにピンとくるものがあるでしょうか。実は、三陸の海産物はどれも素晴らしいんです。岩手をひとつのきっかけに、日本の産物を、日本の食事を、日本の皆さんに見つめ直してもらう機会になればと思いました。
How did you feel about this opportunity? All seafood products from Sanriku are just amazing. I thought it would be great if Iwate served as a chance for Japanese people to take another look at Japanese products, Japanese cuisine, and ourselves.
実際に足を運ばれた岩手の印象はいかがでしたか?
岩手はリアス式海岸のもとで、魚介類が豊富です。山も隣接していて、海の幸、山の幸が身近に感じ取れるんですね。日本の魚や野菜を見て、びっくりする日本人は多分いないでしょう。けれど、味わいに関しては、その土地ならではの驚くべきものがあるのです。田老漁協のワカメは、出身地の静岡で御前崎の採れたてを食べ、修行中の徳島で鳴門の灰干しを目の当たりにしてきた私の経験をしても、びっくりするほどでした。ボリボリと厚手のコシがあって、香り、味わい、いずれも素晴らしい。まだこういうものが残ってるんだ、という感慨が湧きました。優れた希少価値があるなと。
What was your impression of Iwate once you finally arrived? Japanese people are likely not surprised at the quality of Japanese seafood and vegetables. However, with regard to flavor, there are surprising and distinctive characteristics based on each region. JF Taro Masaki seaweed, for instance, has a thickness that gives it just the right degree of ‘crunch,’ as well as a singular aroma and flavor.
田老町漁協の真崎ワカメは、まさに自然味、といったところでしょうか?
自然環境の荒々しさを乗り越えた存在感があるんですね。おそらくワカメにとっていい環境とは、外敵がいない、綺麗にスマートに育っていける場所でしょう。味も美味しいでしょう。でも、そうではない環境の方がたくましく育つに違いありません。それが味となり、香りとなっていく。人間と同じかもしれませんね。より自然な環境で育つことが、やはり食材にとっては重要なんだなと思いました。まだまだ生々しい津波の爪痕の中で、苦難の波を乗り越えたワカメです。
Would you say JF Taro Masaki seaweed has a purely natural flavor? It has a dignified presence in that it has overcome the harshness of its natural environment. That is evident in the flavor and aroma. It’s like people in that regard. The destruction from the tsunami remains etched in our minds ? this seaweed has survived considerable hardship.
立花さんの原木椎茸はいかがでしたか?
椎茸づくりが菌床に切り替わっているなかで、立花さんは原木を貫いていました。率先して、ノウハウも若い人たちに伝えようともしています。春用、夏用、秋用、冬用と、4種類もの菌を使っているのは、菌を知り尽くしているからできることでしょう。だからこそ安定供給にもつながり、良質で、美味しいものを年間通して食卓まで届けることができているんですね。見えない菌との戦いを、私たちの生活にまで定着させてくださっている。香りが強く、余韻の長い椎茸です。まったく天然の椎茸では、供給や価格を安定させるのは困難です。扱う人たちの生活も保証されないでしょう。限りなく自然に近いものを安定供給に近づける、原木椎茸は、優れた方法だと思います。
What’s your opinion of Mr. Tachibana’s baraki raw wood shiitake mushrooms? During the transfer to the mushroom bed, Mr. Tachibana insists on using raw wood. He is knowledgeable with regard to fungus, and it shows in this procedure. This is also how he is able to produce a steady supply, and deliver high-quality, delicious product to dining tables all around the country throughout the year. Shiitake mushrooms have a very strong aroma which resonates for quite some time.
ご著書の一節に“するも料理、しないも料理“とあります。今回は、どんな風に食材と向き合われたのでしょう?
良い食材は、何かすればするほど、その個性や特性が失われていくものです。極端な話、醤油をかける、何かと和える、味噌汁に入れる、それだけで能力は発揮されるものなんですね。私自身、若い頃はつくることが仕事だと思い、人ができないこと、知らないことをすることが、自分の存在価値だと思っていましたが、歳をとるにつれて、何が美味しくて、何が必要で、何をお客さまが望んでいるかは、自分と向き合うより、素材と向き合う方が答えを出してくれることがわかってきました。料理の本質は、素材と向き合って出てきた答えだと思います。それを複合してつくりこむことがより美味しくするのであれば、それが答えでしょう。今回のワカメは、戻し方、保存の仕方、盛り方が重要でした。これも料理なんですね。何か変ったものだけが料理なのではなく、その食材が本来アピールしたかったものを感じる。人を通してのメッセージと言えばいいでしょうか。目で見る、舌で味わうだけではない、そのすべてを食べたと感じていただくことが料理。そんな意識で、お客さまにも楽しんでいただけるといいですね。
In one of your books there is a passage that reads, “Sometimes ingredients need a bit of help; other times they are best left to speak for themselves.” In this instance, how did you regard the ingredients? Truly good ingredients tend to lose their character and distinctive qualities the more they are manipulated. When I was young, I treated [it] as though it was a job, and believed we were defined as professionals by becoming able to do what others could not, and learning what others did not know. What I eventually learned was that the answer is not in understanding yourself; it is in understanding the ingredients.
日本の食の現状をどうご覧になりますか?
欧米化の傾向が強まっているように感じます。決して欧米のものが悪いと言うのではなく、バランスが崩れていないか、ということですね。その理由の一つに、戦後教育があるのだろうと思います。学校給食は、学校でしか栄養を摂れない状況では大きな意味がありましたが、アメリカから小麦を買い入れる事情もあってか、パン食が中心でした。そうしてそうだった世代のご家庭では、3食パンでも違和感がないんですね。市町村によっては、今もご飯が出るのは週に1日だけしか出ないところもあるそうです。また、給食で残ったおかずは、メニューから外れるとも聞きました。例えば、家庭で食べ慣れていないひじきの五目煮は、黒いし、子供は食べませんね。するとメニューから外れて、口にする機会がなくなってしまうわけです。戦後70年は、日本の大切なものを教えない教育だった、と言っては大げさでしょうか。料理界を見ても、調理師学校で日本料理を専攻する生徒は、1割しかいないそうです。確かに、経済が進んで、GDPが増えて、欧米化した今の姿が目指すべき姿でした。外国への憧れは、誰しも持っているし、否定するつもりもありません。でも、今、自分たちの国を見つめ直すタイミングが来ていると思うんです。この国の良さは、まさに、食の豊かさです。私たちに合った、私たちの食事がある。動物の中で、人間だけが、食べるもの以外に興味を持ち、労力やお金を費やします。だから文明や産業は発達はしてきたんですけど、生きる原点は食べること。それにふさわしい、豊かな食が日本にはあるのですから。
What’s your take on Japanese cuisine today? It seems we are being heavily influenced by European and American cuisine. I believe the time has come for us to take a good hard look at our homeland. The true beauty of this country is in the richness of its cuisine. We Japanese have a particular style of food. Eating is absolutely essential in sustaining life. And right here, we have the diet and abundance of food that suits us.
自国を理解してこそ真のグローバルだとも言います。
店に飾った花入れが何焼きか、ご存じない日本人のお客さまもいらっしゃいます。仕方がありませんね。教わっていないんですから。私もこの仕事をしたから知っているだけです。でも、バカラのグラスは皆さん知っている。これは、外国人の目には奇妙な風景に映るでしょう。自国を理解して、その上で相手を理解することが大切ではないでしょうか。日本酒を理解しないで、ワインは語れないと思います。お茶を知らずに、コーヒーの味は分からないのではないでしょうか。この時季ですと、ポルチーニや白トリュフが取り沙汰されますが、日本にだって驚くほどおいしい木の子があります。海外のものばかりに心奪われるのではなく、岩手の椎茸やワカメを知り、食べることの意味や値打ちを、この機会に微力ながらお伝えできればと願っています。今、国内企業の経営トップは、戦後何もないところから苦労を重ねて成功した方々だから、日本に本社を置いているのではないかと思うことがあります。だから、税収も日本に入ります。でも、工場は外国に移してしまいましたね。数字だけを追い求めれば、本社も海外の方がいいという判断もあるでしょう。そうなると、この国は誰が守って、何が美徳で、何を価値とするのでしょう。日本人の誇りを、どう表現すればいいのでしょう。日本人のひとりとして、大きな不安にさいなまれながら思うのは、食べ物は、いちばん静かで、いちばん納得できる、外交手段の一つではないかということです。
It is said that a country cannot become a truly global nation until it first understands its own identity. It’s my opinion that we cannot really understand others unless we first understand ourselves. It’s impossible, for instance, to appreciate wine without appreciating Japanese sake. Would we really be able to appreciate the nuances of the flavor of coffee without first understanding green tea? Food speaks volumes without uttering a word. In my eyes it is a tool of diplomacy.
そのお考えを試す意味でも、パリに出店されたのでしょうか?
そうですね。日本の皆さんに日本の食の価値をご理解いただくには、外国で評価されるしかないと考えました。日本が、東京が、銀座が世界でいちばん発信している場所なら、パリである必要はありません。パリ市内には、世界各国の観光客が日本の数倍訪れるので、発信能力としては適いません。もし、1億3千万人の日本人が「日本はすごい」「お茶は世界一旨い」「椎茸は、ワカメは世界一だと言い始めたら、世界中の人々が「日本に行ってみたいと言うでしょうね。そして、一度食べてもらい、飲んでもらい、見てもらえば、国益だって上がるに違いありません。世界に類のない、謙虚でつつましい国民性も大事ですが、世界に胸を張れるいいものがあることに、自信と誇りを持ちたいものです。
Did you establish your restaurant in Paris in order to test out your theory? Yes, that’s part of it. I was convinced that, in order for Japanese people to really understand the value of Japanese cuisine, we need to earn praise from those outside our country. Paris alone has many times more foreign visitors than Japan, so I felt it was a great place to share Japanese cuisine with a broad audience.
三越伊勢丹「JAPAN SENSES」の活動についてご意見をいただけるでしょうか?
すべてを通して、ひとつひとつの食材を、振り返る良い機会でした。三越伊勢丹の皆さんは何度も岩手に足を運んで、実に細かいところまで突き詰めていらっしゃることも実感できました。そういう方たちが発信していかれることに大きな意味を感じます。日本には良いものがたくさんある。安く、安定供給できるものもある一方で、きちんとした本物も残していかないと、この国の良さは無くなってしまいます。今回は岩手でしたが、他県も同じように、食材の種類が違うだけ、素晴らしいものがあると思います。日本人が、日本のものを日本人に説明する。矛盾も感じないではありませんが、志高く、続けていただきたいと思います。
How do you feel about the activities of Isetan Mitsukoshi’s JAPAN SENSES? Representatives of Isetan Mitsukoshi have visited Iwate on numerous occasions, and that has allowed me to see just how earnest they are in their pursuit of excellence, down to the tiniest detail. While producing a steady supply at a reasonable price, it’s also imperative that we preserve and maintain the original (ingredients), or we will lose the true beauty of this country. Please continue to aim high!
ありがとうございました。Thank you very much for your time.
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