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What's JAPAN SENSES
profile
次代を醸す。元禄に始まる岐阜・瑞浪の蔵で、兄弟は途方に暮れていた。弟が丹精した酒を持って各地を訪ね歩いた兄が、またこう言われて帰って来たからだ。「こんな酒、飲めない」売れる酒より、人の愉しみに貢献する酒を。祖の名「小左衛門」と銘打ってはみたが、味は名折れ続きであった。杜氏に頼るのをやめ、弟は若い蔵人とひたすら知恵を絞った。ある日、兄が食中酒としての生き残りを思いつく。蔵の持ち味である酸を活かした酒はできないか。ようやく、なんとかうなずけるものができ上がると、兄はまたも東京へ。そして、なんとパリへ。予約が取れないと評判のレストランの厨房に乗り込むなり、料理との相性を問うたのだ。すると、同じく味の求道者であるシェフは、惜しみなく胸襟を開いてくれた。熱を帯びる酒談議。終わりのない料理論。その中で気づく。フランス料理にも変化が起きている。時代が変わり、人々の暮らし方が変わり、食が変わる。酒も、変わり続けなければ。その先頭に「小左衛門」がいなければ。三越伊勢丹限定の純米大吟醸。どんな酒かと尋ねると、押しの強い兄とは対照的な弟が言葉を選んだ。「今までになかった出会いを愉しんでいただきたい」未来が今を振り返った時、決して空白に見えないようにと、持てる時のすべてを酒造りに捧げてきた、矜持。軽いけど、旨い。山水のごとく清らかなこの液体には、静かにたぎる魂がふたつ、溶け込んでいる。〈小左衛門〉純米大吟醸 岐阜県・中島醸造/山田錦・愛山/720ml4,860円(税込)伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座 日本橋三越本店地下1階=ラ・カーヴ 銀座三越地下3階=ラ・カーヴ
Sparking the next generation.The Nakashima brothers were at a loss over the rice-brewed sake being brewed at their family’s firm which has a history stretching back to the Genroku era in Mizunami, Gifu Prefecture.The reason is that the older brother, who had taken sake that had been painstakingly brewed to all areas of the country and tried to sell it, returned to report he‘d once again been told that “this sake is undrinkable.”Instead of sake that exists just to be sold, you should brew sake that gives people pleasure. The sake is named after Kozaemon ancestors, but it only brings disgrace to the name.The younger brother decided to stop entrusting the work to a single, master brewer, and instead patiently discussed brewing with young workers at the brewery.The older brother realized that the product would only survive if marketed as table sake.“Can we not produce a sake characterized by the acidic quality inherent in rice-brewed sake, yet still acknowledging the brewery?” he wondered.At last, once he’d achieved something that made sense, the older brother once again visited Tokyo. After that, he went all the way to Paris.He managed to get into the kitchens of restaurants where it was deemed impossible to secure reservations, and talk about how well the sake matched with cuisine. The chefs, who like him were always looking for new tastes, were very frank. They talked at length about beverages and cooking, and during these discussions he realized something.Changes were taking place even in staid, traditional established areas such as French cuisine.As one era ends and another begins, people’s lifestyles change, and so do their eating habits.That meant that sake had to keep changing as well. He decided that Kozaemon had to be at the forefront of this evolution.“Junmai Daiginjo” is available only from Isetan Mitsukoshi. When asked what type of sake it was, the younger brother – the polar opposite of the assertive older brother - described it this way:
“We hope you will derive pleasure as never before”He spent every waking moment on the development of sake so that this time in history could later be recognized as one of significant achievement.The sake is light, yet delicious. Two quiet but passionate spirits simmer quietly within this pure, natural mountain water. “Kozaemon” Junmai Daiginjo / Nakashima Jozo, Gifu Prefecture /Aiyama, Yamadanishiki / 720 ml / 4,860 yen (including tax)Isetan Shinjuku Main Bldg. B1F = Ikinoza Nihonbashi Mitsukoshi Flagship Store B1F = La Cave Ginza Mitsukoshi B3F = La Cave
INTERVIEW
現当主である兄・小左衛門さんに、中島醸造の歴史について伺います。
創業は1702年。祖先が岩村城主からこの地の開拓を命じられ、やがて年貢米を活かして酒造りを始めました。「元禄に始まる」にあやかり、父の代に「始禄」を地元だけで販売。また「桶売り」といって、大手さんにタンクごと売る商売をしていました。当時は、酒を仕込む半年だけ新潟から蔵人が来るのですが、どうも納得がいきませんでした。半年だけということは、半年離れるということ。気持ちも半分しかないようで。それなら私も造りをやろうと、ある大蔵さんで勉強させてもらいました。そこへ弟が戻って来て、自分も造りたいと。その時、二人で話したんです。道は2つある。1つは、量をたくさん造って、とにかく売る。もう1つは、「おいしいね!」と言っていただけるように、品質にこだわり抜き、人の愉しみに貢献していくというビジョンをもって酒造りをしていく。どっちだろうと。やはり後者だろうと、初代の小左衛門の名前でブランドを立上げました。多くの酒造家は農大を出ますが、私たちはそうではありません。おいしい酒って、どう造ったらいいかわからないわけです。なんとかできた酒を新潟の杜氏たちと試すんですが、どうにもならない。それで、思い切って自分たちで醸すことにしました。
Let’s hear about the history of Nakashima Jozo (brewery) from the older brother Munetaka Nakashima, the 14th Kozaemon, the current head of the family.In 1702, our ancestors used rice collected as land tax to launch a sake brewery. In time, my younger brother and I both became involved in the brewing. We did not concern ourselves with producing volume for sales, but instead with producing sake of a quality that brought pleasure to those who consumed it. However, things weren’t going well, so we decided we needed to stir things up and literally brew it ourselves.
プロの手助けを失った環境で、新たな道を発見されたのですね。
弟が造っては、私が東京で当時走りの銘酒居酒屋さんに行きました。すると、ひと言。「こんな酒、飲めない!」。それが4、5年続きました。売上げは、初年度38万、翌年80万。弟が必死に試行錯誤を繰り返し、二人で原料米を探し歩き、私は酒を持って東京の酒屋さんや銘酒居酒屋さんへ。他の酒を飲んでは悩む。そんなことをひたすら繰り返しました。当時は新潟の酒が大ブームで、あの淡麗が売れる酒だと思って造るんですが、できない。次第に蔵癖だとか、造りやすい酒や向いている酒があることが分かってきました。その中で個性をつくり出すにはどうしたらいいのかを考えました。そこで、当時はまだなかった食中酒、食事と一緒に愉しんでいただける酒を造ろうと。旨みであるアミノ酸と、それを支える酸をしっかりと出す。これを製品の特長としました。札幌の酒販店さんが「いいじゃない!」と20ケース注文して下さいました。そんなにまとまった量は初めてで、注文書を持って帰ると、父は「それは詐欺だ。北海道に遊びに行ったと思えばいい」と取り合いません。けれど、1週間も経たないうちにまた注文が来たのです。春に新酒を持って札幌へ行くと、「良く来てくれた。お客さんもほんとうに愉しんでくれている」と言って下さいました。弟にすぐに伝えて、皆で喜びを分かち合い、大きな励みになりました。品質、個性をしっかりつくり上げて、それをお届けするのが、私たちの役目だと心底思えたんです。そこに徹底的にこだわろう。販売テクニックは要らない。どうすればもっと酒がおいしくなるのかだけを考えよう。それが、うちの酒を愉しみにして下さる方への貢献にもなると。
It appears you succeeded in finding your way despite not having the support of a professional.My younger brother conducted tests repeatedly, we searched for the optimum sake rice, and I took the sake to Tokyo, visiting liquor stores and Japanese-style pubs renowned for their sake lists over and over again. We eventually decided to attempt to create a sake unlike any before that could be enjoyed with meals – one in which the amino acids, the key element in the sake’s umami, resounded strongly – and made this the defining characteristic of the beverage.
同じ味を守るのではないのでしょうか?
料理も同じ味が受け入れられ続けるわけではありません。ここ10年間は、軽さの時代。例えば、フランス料理がバターや生クリームを使わなくなってきました。中華料理も油を抑えています。揚げものも、熱湯通しすることもあります。液体窒素のように、化学さえ入ってきている。時代によって変化し、支持される味覚を通り越して、小左衛門は味をリードしていきたい。そう考えて、去年から取り組みだしたのが「軽いけど旨い酒」です。旨みが抜群にあるものはインパクトがあるが、飲み続けられない、体が重くなるんですね。気合い入れて飲もうと、向き合うことになる。一方、軽いとなると、物足りなくて、まして酸やアミノ酸を売り物にしてきた小左衛門が造る酒ではありません。体が心地良いし、食べ物にも合う。もう一杯だけ飲んで帰ろう。そういう酒が新たに向かっていくところだと思うんですね。パリに、新しい軽やかさで最先端を走るレストランがあります。三つ星を獲り続け、世界一予約の取れないと言われる店です。そのシェフが、遂にソースを使った料理をつくりだしたんです。昔ながらのバターと生クリームではない、新しいソース。旨くて、軽い。軽くて、旨い。そういう新たな料理に合うワインも求められていく。そんな風に、一つの食の変化に触発されたり、時代の流れの空気を感じて、料理人や醸造家は変えていくのだろうと思うんです。
Isn’t the key maintaining the same taste?Cuisine also does not continue to be appreciated if the taste remains the same. The use of butter and cream, once staples of French cuisine, began to taper, and less oil is now used in Chinese cooking. Our goal is to change with the times, to surpass the trends and tastes of the current day and to have Kozaemon be the leader in terms of taste. Last year, we adopted a “light, yet delicious” approach.
海外へのアプローチも独特だと伺っています。
世界のおいしい料理トップ3の共通点は「出汁」を取ることです。日本の「出汁」、フランスの「フォン」、それと、中華料理の「上湯(シャンタン)」ですね。そこにワイン含め、醸造酒を愉しむ文化がある。それなら日本酒も愉しんでもらおうと、国外にも出始めました。多くの蔵元さんは業界や団体として行きますが、自分の酒ですから、自分が行って説明します。歴史を理解してくれるのではないかと、まずヨーロッパに行き、業者さんではなく、レストランを訪ねました。料理を食べてからキッチンに行って、「この料理にこの酒は絶対に合うと思う」と。「料理にも使ってみて」と言うと、すぐに試してくれたんです。フランスって、高級酒を料理に惜しみなく使うんですね。シェフと酒や料理談義をする。それが、意欲になる。料理人と話が合って来る、向こうの言ってることがわかってくると、話が深くなる。そして、「またキッチンへ来いよ」と。ここ5年くらいは、フランス料理と中華料理を学ばせてもらいましたが、酒に対する考え方が変わったというか、point of viewがいくつも持てました。面白い酒のアイデアが浮かんで、商品化し始めているものもあります。「再仕込み貴醸酒」は完璧にソーテルヌやトカイを意識しました。貴醸酒はありますが、「再仕込み」というのは聞いたことがありません。
I’ve heard that your approach to sales abroad is also unique.
We didn’t visit vendors, we visited restaurants. After having dined there, we went into the kitchens and made statements such as “Our sake would go extremely well with this cuisine” and “You should try our sake in your recipes.” We had in-depth discussions about sake and cooking with chefs. That really motivated me, and enables Kozaemon to continue to evolve. Recently we developed a saishikomi kijo. It’s a Japanese sake that brings to mind Sauternes or Tokaj wines.
「蔵元の取組み」として掲げている「感謝」には、どんな思いが込められているのでしょう?
日本酒は、ぜんぶ自然のもの。米は、太陽、水、土の賜。発酵は微生物の働きですね。大いなる大自然の一角で、僕らは動いている。そして、飲んで下さる方がいる。僕らはすることがない。感謝するしかないんです。この精神を忘れては、絶対だめだと。五穀豊穣に感謝する新嘗祭は欠かしません。白酒(しろき)、黒酒(くろき)といって、日本酒はもともと神にお捧げする飲み物。杜氏はいっそうその気持ちは強く、造りの期間は毎日、中臣祓詞(なかとみのはらえことば)を京都の酒の神様である松尾大社に上げます。特に神聖な酒を醸す者は必ず、中臣祓詞(なかとみのはらえことば)、いちばん長いお祓いを奏上して作業に取り掛かったと言われています。酒造り唄というのがありますが、当時はストップウォッチの役目をしていたんですね。この作業には3回歌うとか。それ以前は、祝詞を奏上しながら造っていたらしい。そのくらい神々への感謝と密接なんです。「蔵元の取組み」には「諦めない」、「真剣勝負」とも掲げていますが、これも息をするのと同じように、酒造りにはごく当たり前。ひとたび酒造りの道に入らば、一生酒造りの道に生きよと。そうさせてもらえることにも感謝です。ある長野県のお蔵さんに行くと「感謝」と書いた紙が、裏返しに、タンクに向けて貼りつけてありました。びっくりしましたね。
What kinds of thoughts and feelings are incorporated into the “gratitude” you term “a brewer’s approach”? Japanese sake is all natural. Rice is a product of sun, water, and earth. Fermentation is the activity of microscopic organisms. We work in one small part of a vast natural area. Then there are the people who drink the sake we produce. We can only feel gratitude toward those people. We use expressions such as “never give up” and “play for keeps,” but once you set out on the path of sake creation, you have committed to a lifetime on that path. I’m also grateful to have had the opportunity to do this.
蔵のこれからについてお聞かせください。
何も分からないところから四苦八苦して、醸造業界や、食べ物や、酒を取り巻くあらゆるものに助けてもらってきました。今度は私たちが、新しい考え方や味わいをお伝えすることができれば、一つの恩返しになるのではと思っています。それもまたありがたいことだし、小左衛門としての個性を確立していくことになるのではと。私自身は造りではなく、おこがましい言い方をすれば、千利休以来日本にいなかったタイプの、広く食の世界のプロデューサーでありたい。私が口に出して、蔵の中で皆で考える。それを酒という形にしていくのが、造り手である弟。こんな精神で取組んでいる蔵です、と伝えに行くのが営業の役目。そんな、ちょっと変わった法人なんでしょうね。社会にどう貢献できるか。小左衛門を飲んだ方々がどんな風にいられるのか。ビジョンを明確にもって、この先も酒造りをしていきたい。文化、伝統産業の一つとして、次の世代や未来がやがてこの時代を見た時に、空白でない、真っ白に見えない精神をつくるのが仕事かなと考えています。
Please share with us your thoughts on the future of the brewery.
If we succeed in sharing a new way of thinking or a new taste, we feel this is one way to display our gratitude, and to establish the distinct personality of Kozaemon. As an element of culture and tradition, we want future generations to look back and view our era as one in which we not only created products; we created a richness of spirit.
日本人のものづくりについて、どうお感じになりますか?
海外で、小左衛門を並べ、何十人も集まって、酒の会をやることがあります。その際に、米を理想的な状態で蒸すためには「乾いた蒸気」が必要で、どうすれば得られるのか一晩中考えたとか、私たちにとっては当然のことを話していると、「Very Japanese!」って驚かれるんですね。ワインや焼酎の造り手さんですら日本酒の蔵同士が話していると「なんだ、そのマニアックな話は!」と。まして外国人からすれば、「Very Japanese!」なのでしょう。そう言われるこの業界にいられることはほんとうにうれしいし、そういうことをトップレベルで語れる日本人が大好きです。
What is your feeling on the way in which Japanese people approach making things?To steam rice in the ideal manner requires “dry moisture,” and the fact that thinking about this kept me up at night was something I accepted as a matter of course, though surprisingly it was regarded by people abroad as being “very Japanese!” Winemakers also respond with comments like “You must be out of your mind.” No one comes close to Japanese people in terms of this dedication to our work, to our craft.
三越伊勢丹のメッセージ「変わる、その先へ」についてはいかがでしょう?
私も根本は守りの人間。しかし、この仕事をしていくうちに現場で学んだことは、「止揚の精神」が根底にある。昨日までの自分をどう批判できるか。このメッセージは、まさにそれを問うているのではないかと思います。蔵の皆にもよく言います。昨日はこうだったから今日もこれでいこうじゃダメなんだと。強い力でぶつかり合わないと。ダイヤモンドの研磨と一緒ですね。
How do you feel about Isetan Mitsukoshi’s message, “Ahead of Change”?Among the things I’ve learned in doing this work, “the spirit of progression” is the most fundamental and profound. How do you assess your life and yourself as a person up until yesterday? You cannot simply say to yourself that you will be a certain way today because you were that way yesterday. You have to take on challenges with everything you’ve got. It’s like polishing diamonds. That’s how the message resonates with me.
杜氏である弟・修生さんに伺います。ご苦労も多かったのでは?
酒蔵をやるつもりはありませんでした。ただ、ものづくりが好きだったのは確かです。どんなものでも新品そのままは嫌で、自分で手を入れたくなるんですね。ものづくりの仕事には就きたかったんですが、甘いものが好きだからパティシエが向いているかなと思っていた矢先、偶然、酒やビールの自作キットメーカーを訪ねる機会がありました。そこで日本酒キットを買って造ってみたら、もうどうにもまずい液体ができて。あまりに悔しくなって、実家の門を叩きました。時間がきたら働くという酒造りが、僕の1年目でした。わからないままやっている中でふと、ものづくりってこんなのでいいのか、と疑問に思ったんです。よその酒は、どうしてこんなにさらっとしておいしんだろうと。次第に、おいしい酒をつくるために、あれやりたいこれやりたいと思うようになり、大きな設備投資もできないので、工夫しながら、ただがむしゃらにやってきました。楽しんで、寝る時間を惜しんだという感じでしょうか。大変だったかと聞かれても、仕事が好きだから楽しい、という気持ちが大きい。母親が急に泣き出す子供の世話をするのと一緒で、これやってあげなきゃいけない、というのが常にありました。つらいというより、体が悲鳴を上げるとか、眠いとか、痛いとか、そういうことです。
We’d like to ask a few questions of your younger brother, master brewer Nobuo. Do you face many hardships?Above all, my work is enjoyable because I like it. I usually regard my work just as I imagine a mother who tends to a child that has suddenly begun crying would. I wouldn’t say it’s agonizing, but you do deal with bodily aches and pains, fatigue and the like.
繊細で、ストイックなお仕事ですね。
例えばボトリングは、毎年「こうじゃないか」と思って貯蔵します。僕は思ったようになるかと胃が痛み、兄は計画とズレないかと胃が痛む。事実、今年の新酒の中にも発売を止めたものもあります。毎朝、お参りは欠かしません。目で見えない、予測でする仕事、手助けあっての仕事です。見えないものに手を合わせると、気持ちが浄化します。これからの季節は、今期の反省と来期をどうするかを考えます。営業からのフィードバックと造り手の狙いとの違い、小左衛門の方向とのズレを検討します。農家に行って話を聞いたり、蔵の外で情報収集の時期ですね。胃の痛みからは、ほんの少し解放されます。
It sounds like delicate yet very demanding work.If you consider bottling, each year when we feel we’ve completed the batch we stockpile it. I worry over whether or not things will go as I’ve envisioned, while my older brother is concerned with whether or not things will go according to plan. Actually, among our new sakes this year, there are some that we have decided not to sell. A daily morning visit to the shrine is essential. It’s a job you do through prediction, not through sight; you need support. It’s edifying to pray over something you cannot see.
若い蔵人さんが多い印象があります。
徐々にそうなりました。最初は新潟の杜氏さんとやっていましたが、今、頭をやってくれている若者とめぐり合い、僕と二本柱でやるようになりました。こういう仕事を若い世代に残していきたい、楽しさを伝えたいんです。最近は、夜働いてもいいという若者もいるんですね。瑞浪は陶器づくりが盛んで、ものづくりが好きな若者も多い。今は3人の蔵人とパートさんの6人で回しているんですけれど、これを2倍や2.5倍くらいにして、24時間を交代しながら、酒造りがメインでもいい、陶器がメインでもいい、つまりはものづくりを極めたい人たちで酒をつくっていく構想を練っています。ものづくりに対して共通の思いをもった若者が、酒をはじめいろいろなものを造っていくことが、土地と自然、人と自然の共生につながり、世の中に大きく還元できることになるのではないかと思っています。僕らの酒造りは、機械のボタンを押して、データ取りして行うものではありません。思いや五感を使って造る。それは、どんなものづくりにも共通で、必要不可欠なものではないでしょうか。
It seems as though there are many young workers at your brewery.
We’ve taken on many young people as we want to share with them the enjoyment of this work. Earthen ware is popular in Mizunami, and as such there are many young people here who enjoy making things. We’ve designed a scheme in which people working in 24-hour shifts who want to become fully enveloped in creation make sake. Sake is made with feeling and by using the five senses. Of course this is true in the creation of anything, and is absolutely vital.
今後、どんな酒をお造りになりたいですか?
うまい透明感、透明感のある酸味を打ち出したい。もともと酸のある小左衛門なので、そこに透明感を生み出したい。ここ数年、日本酒業界ではどうやって酸を出すかを試行錯誤していますが、酸を出すだけではなくその質を問いたい。学術的にはきれいな麹をつくればいいのですが、それではなにもかもさらっとしたものになるし、お米が活かされていないんです。僕らは、大吟醸でも酒粕はあまり出しません。粕を60%出すところもあるが、もったいないと思うんです。僕らはそこまでいかない方法が必ずあるはず、という立場に立って、その方法を考えています。
What kinds of sake do you hope to produce in the future?
I’d like to produce a deliciously crisp, tart flavor. Kozaemon has always had that kind of flavor, so I would like to add a crispness to that. Over the past several years, there has been much experimentation in Japan’s sake industry regarding how to bring out that acidic quality, but my concern is not just acidity but quality.
ONLY MI「小左衛門 純米大吟醸」はどんな酒でしょう?
「山田錦」「愛山」という2種類の米を使い、香り、味わいともにエレガントと言うに相応しい逸品です。「大吟醸」とあると、さらっとして香りがいいと想像するでしょう。でも、その逆。香りのパンチが来て、濃いかなと思ってもすっと消えていく。もうひとつは、開栓しても、最後までおいしい酒になっています。僕なら食事の前の方、テリーヌを食べながら飲みたいなと。有機野菜、生のとうもろこしがあれば、いいアテになるでしょう。酒器は、ちっちゃいショットグラスですかね。今までになかった出会いを愉しんでいただきたい。
What kind of sake is ONLY MI Kozaemon Junmai Daiginjo?
“We hope you will derive pleasure as never before”It is a high-quality sake produced using two types of rice – “Yamadanishiki” and “Aiyama” – and featuring an elegant fragrance and flavor. When you think of “daiginjo” sake, you imagine a straight flavor and nice aroma. But this sake is actually the reverse of that. The fragrance packs a punch, making you think the flavor is going to be strong, but it gradually fades out. The flavor is not adversely affected even after the bottle has been opened. The flavor is consistently good until the last drop – it goes well with terrines, organic vegetables and raw corn. Drink it in a small shot glass.
ご自身にとって、酒とは何でしょう?
数年前までは、「感謝」「出会い」「自分にとっての成長」でした。最近は、「日本」「ナンバー1」「歴史」です。日本酒は世界で最も緻密な酒だと言われます。ナンバー1であることを、日本人に気づいてもらいたい。酒造りにはいろんな要素があって、伝えたいもの、残ってほしいものが詰まっています。それを伝えていくことが、歴史に厚みを加えることではないかと。もちろん感謝は常にあります。生きている間に酒造りを伝えていくこと、それ自体が感謝でもあります。他の仕事に定着できなかったある若者が、ひと冬の仕事を終えて、「日本酒造りってほんとうに楽しい!ぜひまた呼んでください!」と言ってくれました。そう言ってもらえる仕事をしていることを、心から有難いと感じます。
What is sake to you?It’s “Japan”… it’s “number 1”… it’s “history.” Japanese sake is the most sophisticated sake in the world. I want Japanese people to understand that it is indeed the world’s best. Additionally, there are many elements in the creation of sake, and there are many things I’d like to share with people and to leave behind. Sharing those things with people is what gives history its depth and richness.
ありがとうございました。Thank you very much.
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