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What's JAPAN SENSES
百年先の伝統。 Tradition a 100 Years from Now
The Heart of JAPAN SENSES
Vol.01 / 能作克治
PROFILE
ワインを寝かせてもいい。花器として楽しむのもいい。動物のオブジェをこしらえた人もいるという。初めて触れる誰もが「ああっ」と声を上げるのは、世界共通らしい。「折り紙のようですね」との感想に、能作克治は目を細めた。錫(すず)100%の食器。前例がないのは、いともたやすく曲がってしまうからだ。研究に明け暮れ、夢やぶれかけた頃、ある人の言葉に目が覚めた。「曲がるなら曲げて使えばいい」。短所がたちまち長所に変わった。藩主前田利長が、富山県高岡に七人の鋳物師を招いたことに始まる、高岡銅器400余年の歴史が動いた瞬間だった。鋳造の常識である砂に代えてシリコーンを使う。職人の意識を変える。伝統に挑む苦労は想像に難くないが、それを尋ねても、よく通る声でこう返してくるだけだ。「すんだことを振り返ってもしようがない。時間は前にしかないのですから」。100年先の伝統を今つくる、矜持。伝統産業の真ん中でイノベーションを説く勇気を慕って、工房には全国から職人を志して訪れる若者が絶えない。心地よい重みを感じながら、正方形を曲げてみる。粗い分子構造が擦れ合って、チチチと錫がさえずる。命が吹き込まれたように形を変えるグリッドは、手をつないだ人々が伸びやかに踊るようだ。能作のモノづくり。その魂は錫のようにやわらかで自由だ。(そうそう、縦長にひっぱってトロフィーに見立てた人もいるとか)
You can lay a bottle of wine on it, enjoy it as a flower vase or some even make animal figures with it. 'Oohs' and 'aahs' of delight are heard from all, regardless of nationality, when they touch it for the first time. Katsuji Nousaku was very pleased to hear someone comment, 'It is like origami.' Tableware made of pure tin. Nobody has ever done this because tin is so flexible, maybe too flexible to craft. After repeated trial, when he was about to give up, a remark from a person made him realize 'why not bend it, if it is easily bent' and a disadvantage was instantly transformed into an advantage. That was the moment a new step was taken in the over 400-year history of Takaoka Copper, which was started when Toshinaga Maeda, lord of the Kaga Clan, stationed seven 'imoji' (metalworkers) in Takaoka, Toyama Prefecture. It is easy to imagine the difficulties in challenging traditions such as replacing the customary practice of using sand with the innovative use of silicone and changing the mentality of craftsmen. But Katsuji Nousaku replies simply in a clear carrying voice, 'There is no use in looking back, time only lies ahead.'  Pride is now found in creating the traditions of a 100 years from now. Admiring such courage to advocate innovation within traditional industry, young people relentlessly come to the foundry aiming to become a craftman. Bending a square net of tin feeling its pleasant weight, you will hear the crackling sound generated from scrubbing together of its coarse molecular structure. The grid changes forms, as if alive, giving the impression of people holding hands and freely dancing. Craftsmanship of NOUSAKU. Its spirit is forgiving and free just like tin. (I heard that someone stretched it out into a trophy.)
MOVIE
INTERVIEW
KAGOの発想は、どこから生まれたのでしょう?
商品開発をずっとしたいと思っていました。しかし、どんな商品が求められているのかがわかりませんでした。伝統産業は分業体制が多く、能作は着色前の製品を問屋に納める「生地屋」だったため、使う方の顔が直接には見えなかったのです。ある時、店舗で販売する方からお客さまの声を伺うことができました。「食器が欲しい」。早速取りかかろうとしましたが、私たちが得意とする銅合金、真鍮は食品衛生法で使用が認められません。そこで錫を考えました。錫は、一般的には銅やアンチモニ、鉛を入れて硬くしますが、オリジナリティと環境やリサイクルまでを考えて、錫100%に挑もうと決めました。誰も商品化していない、世界初の試みです。それもそのはず、錫は軟らかく、とにかく「曲がる」のです。欠点を補おうと、肉厚にしました。すると重くなり、しかも錫は高価なため、価格に跳ね返りました。ジレンマが1年ほど続いた頃、デザイナーの小泉誠さんにお会いしました。すると、「曲がるなら曲げて使えばいい」と。欠点を長所にする逆転の発想に目が覚めるようでした。さっそく曲げて使う器を作り、KAGOと名づけたのです。
What inspired you to make KAGO? As in Japan, we are not basically familiar with table ware made of metal. Since I  wanted to develop something new, using our casting technique, I decided to try with 100%, pure tin. When it was about to reach a dead end because of its softness, a designer, Makoto Koizumi, said, 'Why not bend it, if it is easily bent?'  It all started with this; a reversal in thinking.
評判は、いかがでしたか?
お客さまは非常に驚かれます。日本も世界も同じく、「ああっ!」と声を上げて。曲がらないはずのモノが曲がる、という愉快さは世界共通なんでしょうね。食器、花器、動物のオブジェをつくる方もいます。高岡で行われたバレーボール大会ではトロフィーになりました。渡す時は、まっ平ら。縦に長く引っ張って、中にバレーボールを入れて。正方形で持ち運びもしやすいので、海外からの旅行客がお土産にすることも多いようです。外国の方はその場でプレゼントを開けるので、すぐに話が弾むんですね。いちばん難しかったのは職人です。これだけ柔らかいものは、腫れものに触るようにしないと製品になりません。硬いモノばかりをつくってきた 職人の意識を、根本から変える必要がありました。製法も同様で、伝統的な生型鋳造ではバリが多く出てしまいます。よほど腕のいい職人が時間をかけないと仕上げができません。量産に対応するために、それまで研究していたシリコーン鋳造を本格的に加速させました。鋳造では大敵であるガスを逃がすため、ふつうは砂を使います。シリコーンはガスが抜けない。この点をどう解決するかということに、遣り甲斐を感じました。
What has been the feedbacks to these products? Everybody is very delighted. Many foreign tourists take it home as a souvenir. I had to completely change the mentality of craftsmen for the production, though.
錫の魅力を教えてください。
曲げると音がするでしょう。錫の分子が擦れ合う音です。錫の分子は構造が粗く、擦れると音がする。ダメージはありません。錫鳴き、と呼んでいます。生き物のようですよね。錫は熱伝導もよく、触っているうちに温かみがでて、人の手になじむ金属です。日本人の好きな色でもあるんですね。日本人がいちばん苦手な素材は金属だと言われます。農耕民族なので、焼き物や木製品の肌を好むんですね。ところが、錫はどこか陶器のようで、金属らしさがないことが特長と言えます。滅菌作用もあり、生体細胞には影響しないことが分かっているので、純度100%錫の曲がる特性と併せ、最近では手術に使う道具も作るようになりました。
What is the attractive about tin? It makes a crackling sound called 'tin cry' when bent. It will fit to your hands as you use it. Japanese do not particularly favor metal as a material, but tin gives a feeling that is similar to pottery. As it also has an antibacterial effect, we've recently started producing surgical instruments with it.
能作のモノづくりの中心にあるものは、何でしょう?
日本の伝統技術は「和」を立てる技術です。しかし、あまりに「和」を立て過ぎると、失敗してしまいます。世の中の生活形態が変化しているからです。現代に受け入れられるためには、新しい切り口、新しいデザインを入れなければなりません。能作は「素材」と「デザイン」で開発を行なっています。「素材」とは金属であり、それぞれの金属のいちばんいいところを引き出すこと。「デザイン」とは時代背景です。高岡には400年からの鋳造技術があるので、「モノ」がいいのは当たり前です。それに「コト」の部分、錫の特性であったり、高岡の歴史であったりを掛け合わせる。さらに最近はもう一つ、「ココロ」を加えようとしています。ココロとはつくっている職人の心意気です。つくり手は誰しも、使う人にいいモノを届けたいと願っています。いちばんの喜びは、自分のつくったモノを使っている人が見えることです。そのモチベーションがいっそう上がり、励みになるようにしていきたい。「モノ」、「コト」、「ココロ」の3要素が揃えば、お客さまは手を伸ばしてくださるに違いありません。それは、日本だけではなく、世界にも通用することだと思います。
What is at the core of NOUSAKU's craftsmanship? Creating products based on the fusion of 'material = metal', and 'design = historical back ground.',and 'sprit of craftmanship'. The joy of a craftman is to see people using the products. I want to further enhance such motivation.
そんな能作のモノづくりに、多くの若者が惹かれています。
鋳造は、かつては振り向きもされない職場でした。若い人が集まるとはとても考えられませんでした。それが、近頃どうしてと言えば、日本のモノづくりのすばらしさが若者にも伝わるようになったからだと思います。アメリカの大学を卒業したある若者が、間もなく錫の仕上げ担当で入社します。語学力を活かせる部署もあるのですが、断固として現場の職人を熱望したのです。能作に集まる若者は、能作の製品が好きだと言います。会社が好きだと言ってくれます。仕事とは、好きなことができるということが何を措いても大事であって、仕事を好きになるということがいちばん大事ではないでしょうか。それは能作の仕事に限らない、すべてに通じることだと思います。
Why are so many young people attracted to NOUSAKU's craftsmanship? Create products based on the concepts of 'material = metal' and 'design = spirit of the times.' The joy of a craftsperson is to see people using the products. I want to further enhance such motivation.
とはいえ、鋳造の現場は厳しいと思いますが。
私自身も17年間現場で働き、この10年が新たな販路を求める仕事をしてきましたが、人から「苦労したでしょ」と聞かれても、あまりそうは思いません。すんだことを振り返ってもしようがない。時間は前にしかありません。社員にもよく「今を大事に生きたら」と言います。そうすれば未来は開ける。過ぎ去ったことは苦労とは思わない。そんな思いが若い人にも伝わっているのかもしれません。おかげ様で、定着率はほぼ100%です。技術の伝承もうまくいってますが、思いが伝わればと、技術も伝わるんですね。
Working in a foundry is very hard work, isn't it? No, I don’t think I’ve gone through hard times. There is no use in looking back, time only lies ahead. Seize the day. The young people are beginning to receive that message. If this message gets across, skills will also get across.
伝統とイノベーションについて、お聞かせ下さい。
伝統とは守るだけではだめだと思います。伝統産業ではよく「守る」と言いますが、必要なのはむしろ「革新」ではないでしょうか。新しい事を進めないと伝統産業は生き残れません。100年経てば、今やっていることがまた伝統になるのです。伝統とは革新の連続なんです。そういう意識の人が、これまでの伝統産業には少なかったようです。すべてを守っていては新しいことは起きません。野球と一緒で、どんな球が来てもうちはバットを振るんです。振らない人が多すぎるんです。ド真ん中のストレートが来ても見逃してしまう。とにかくバットに球を当ててみないと何事も起きませんからね。うちはとにかく振ってみる。それが先へ先へとつながっていくんです。それをせずに、いろいろ考えていても何も生まれないと思うんです。一方で守るべきは、根底に流れる伝統の技術。これが揺るいでは新しい進化につながりません。消え去る技術になってしまう。伝統産業はそこが危ういのも事実です。技術が抜けかけていて、どう継続するか。守るべきところはそこなんですが、仕事が減っていくうちに守れなくなっているんですね。仕事を増やす、つまりいかに売るかを考えなくてはなりません。
What are your thoughts on tradition and innovation? You cannot just keep defending tradition. What’s needed is 'innovation.' In 100 years, what we are doing now will be tradition. Tradition stems from a series of innovation. On the other hand, we have to preserve traditional techniques. If orders decrease, we would not be able to preserve traditional techniques. So I try to get more orders. In other words, I think about how to sell more.
能作さんの独自の発想は、一体どこからくるのでしょう?
単純です。僕は仕事が大好きなんです。仕事が楽しいんです。職人の時は体力も限界までやりましたし、お客さんの顔が見えるようになってからは、いろんな人の顔を見ながら新しい開発ができます。結果が常に見える。それを見て、あたらしい次のものがどんどん出てくる。非常にいい循環になっているんです。かつてはカメラマンとして大手の新聞社にいました。その後、ここへ来てみると、中小企業の面白いところに気づきました。結果が出るのが、すごく早い。それが次の楽しみ、次のステップにつながるんですね。
Where does such unique thinking come from? I love my work. I enjoy it very much. I used to work as a photographer at a major newspaper. Then I came here and found how fun it is to work at a smaller company. You can see the fruits of your labor immediately. And that leads to the next step.
世界における日本のモノづくりについて、どうお考えですか?
海外に出て実感するのは、日本のモノ作りは世界一だということです。ほんとうに素晴らしい。技術面においても、製品の丁寧な作りにおいても、金属だけではなく、どんな素材でも世界一だと思います。しかし、そのアピールが十分ではない。日本人はおしとやかで、海外の人が白か黒かで聞いてきても、グレーで答えてしまいます。本来が素晴らしいのですから、日本は素晴らしいでしょう、ともっと自分を出す、自己PRすることがいちばん大事ではないでしょうか。口下手を気にし過ぎて、自分の仕事に自信がないように映ってしまってはもったいない。もっと自信持っていいんです。世界ナンバー1の技術を持ってるんですから。伝え方が大事なんですね。同じレベルの商品だったら、プレゼンが上手い方が全然売れちゃうでしょう。実は品質が逆転していても、そっちに行っちゃいますよね。だからそこを頑張らないと。うまくなってきているけれど、世界的に見ればまだまだ弱い。振り切ったパフォーマンスをしないと、なかなか向うの人は目を向けてくれませんからね。
How do you view Japanese craftsmanship in the global stage? Japanese craftsmanship is the best in the world. But it has not yet been fully expressed. Japanese craftsmen are not good at promoting, and appear to be less confident about their work. Shrugging off the shyness and acting boldly is sometimes important to appeal in the global market.
三越伊勢丹の「JAPAN SENSES」活動について、ご意見をお聞かせください。
伝統産業の産品にはいいものがたくさんあるんです。けれど、それを見せること、伝えること、売ることがなかなかうまくできません。その大きな手助けになると思います。日本の素晴らしさ、伝統の技術をどんどん伝えていただきたい。<em>産地を、日本を活気づけるのは、モノが動くことです。その力に</em>なっていただければ、非常にありがたいと思います。
What are your thoughts on Isetan Mitsukoshi's JPANA SENSES promotion? Selling products is essential when vitalizing production and Japan as a whole. I hope them to facilitate the promotion , as they are the professionals in the field.
能作の将来をどう描かれているのでしょう?
大きな会社になる気持ちは一切ありません。一社が大きくなって、そこがクシャミをすると全員が風邪をひく。それでは困りますから。産地を盛り上げたい。鋳造も、仕上げも外注さんをどんどん増やして、産地の活性化をまず図りたい。いずれはのれん分けをして、販路も渡しながら産地をどんどん活性化していきたい。能作には営業という立場がいません。営業してくださっているのは、富山県民であったり、高岡市民であったり。地元の人たちが県外で能作をアピールしてくれているんです。ですから地域貢献、富山に措いては富山の地域貢献、日本においては日本に貢献しなければと思います。それなくして世界に出ても通用しないと思います。大きいことを言えば、日本の伝統産業全部を変えたい。方向は変わらないので、おそらくこのまま突っ走って行くと思います。至って単純なんです。この仕事が好きなんですね。
How do you envision the future of NOUSAKU? I have no intention of expanding the company and making it larger. I want to outsource casting and finishing work to other foundries in the region to vitalize the industry. Then I would like to change the overall traditional industry in Japan.
能作さんにとっての「覚悟」をお聞かせいただけるでしょうか?
決めたらつづける。諦めずに続けることが、自分の覚悟です。
What is your driving 'determination'? I am determined to keep on working on something once I decide to do it. I will keep moving forward and never give up.
ありがとうございました。 Thank you very much.

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